日本で古くから食べられているあわ・きび・ひえ。名前は聞いたことがあるけれど食べる機会も少なく、ここ数年では収穫量も同じ穀類のそばと比べて3つ合わせても100分の1以下となっています(1)。
- そば:34400トン
- あわ:51トン
- きび:109トン
- ヒエ:106トン
特産種苗 No.28 – 雑穀類の生産状況 – 1.年産別生産の概要 – 平成29年産より
しかし、これらの雑穀に注目が集まってきているのも事実です(2)。最近ではスーパーフード=栄養価が高い食べ物としてニュースやテレビにも取り上げられることも増えました。
でも、雑穀にだって種類は数多くあります。実際にどれぐらいこうした雑穀には栄養が含まれていて、どの雑穀が栄養価の高いものなのでしょうか。
そこで今回、カロリーをはじめとする栄養成分を次の5種類(あわ・きび・ひえ・もろこし・はと麦)から比較してみました。また、普段私たちが食べ慣れている食事との違いを見るために、お米も追加します。
なお、比較する穀物の状態は生の精白粒(外皮をむいた食用の部分)となります。火を通したり水につけていないそのままの状態で比べたものなのでご注意ください。
目次
カロリーや三大栄養素を比較!お米よりもたんぱく質が豊富
食品名 | カロリー | 水分量 | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 |
粟 | 367 kcal | 13.3 g | 11.2 g | 4.4 g | 69.7 g |
ひえ | 366 kcal | 12.9 g | 9.4 g | 3.3 g | 73.2 g |
もろこし | 364 kcal | 12.5 g | 9.5 g | 2.6 g | 74.1 g |
きび | 363 kcal | 13.8 g | 11.3 g | 3.3 g | 70.9 g |
はとむぎ | 360 kcal | 13 g | 13.3 g | 1.3 g | 72.2 g |
米 | 358 kcal | 14.9 g | 6.1 g | 0.9 g | 77.6 g |
まずはカロリーと水分量、三大栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物)の含有量で見比べてみることにします。
全体を通して分かることの1つ目としては、ここで挙げている雑穀類はどれもお米と比べてたんぱく質が多く、炭水化物が少ないということです。
たんぱく質は炭水化物と比べて日本人の食生活ではなかなか摂取しづらい栄養素なので、主食としてこれだけ取れるのは嬉しいですね。
あわ、きび、はと麦に関しては、お米の2倍近いたんぱく質量です。
あわ・きび・ひえは脂質がやや高い
食品名 | 脂質 |
粟 | 4.4 g |
きび | 3.3 g |
ひえ | 3.3 g |
もろこし | 2.6 g |
はとむぎ | 1.3 g |
米 | 0.9 g |
お米が100gあたり0.9gと低脂質なのは知られていることですが、そのお米と比較するとあわやきび、ひえなどの穀類はその3倍〜4倍近くの脂質を含んでいます。
脂質はたんぱく質や炭水化物よりもグラムあたりのカロリーが高く、1gあたり9kcalのエネルギーとなるので、取りすぎには注意が必要です。ただし、脂質がお米に比べて多く含まれているといっても、100g中の3g、4g。
実際は水をいれてお粥や炊いた状態で食べるので、調理後であればこの100gあたりの脂質量はもっと減少します。
例えば、同じ量の乾燥大豆であれば100gあたり19.7gとかなりの脂質を含んでいるので、お米と比較するとあわやひえなどの穀類の脂質は高いですが、食べ物全体で見ると注意するほど高くはありません。
お米に比べて炭水化物量が少ない
食品名 | 炭水化物 |
粟 | 69.7 g |
きび | 70.9 g |
はとむぎ | 72.2 g |
ひえ | 73.2 g |
もろこし | 74.1 g |
米 | 77.6 g |
たんぱく質が多い代わりにお米以外の雑穀は炭水化物量が少ないこともポイントとして挙げられます。
体のエネルギー源となる炭水化物およびその主成分である糖質は、必要不可欠な栄養です。ただし、その取りすぎによるマイナスも多く、1日の栄養摂取の中で一番大きなウエイトを占めるといっても過言ではない主食をより炭水化物が少ない食材に置き換えられるのであれば、嬉しいですね。
実際、あわとお米を比べると100gあたりで8g近い炭水化物量の違いがあります。1日3食摂る主食ということもあって、置き換えられるならなかなか影響がありそうです。
穀類に含まれるミネラルとビタミン類を比較
これまではカロリーと三大栄養素について見てきました。ここからは食品に含まれるミネラル、そしてビタミン類について比較しながら、どの雑穀に顕著な栄養成分が含まれているかを見ていきます。
まずは主要ミネラルであるカリウムやカルシウム、鉄、亜鉛などの項目を見比べてみましょう。
ミネラル類はあわ・もろこし・ひえが多い
食品名 | ナトリウム | カリウム | カルシウム | マグネシウム | リン | 鉄 | 亜鉛 | 銅 | マンガン |
粟 | 1 mg | 300 mg | 14 mg | 110 mg | 280 mg | 4.8 mg | 2.5 mg | 0.49 mg | 0.88 mg |
もろこし | 2 mg | 410 mg | 14 mg | 110 mg | 290 mg | 2.4 mg | 1.3 mg | 0.21 mg | 1.12 mg |
きび | 2 mg | 200 mg | 9 mg | 84 mg | 160 mg | 2.1 mg | 2.7 mg | 0.38 mg | – |
ひえ | 6 mg | 240 mg | 7 mg | 58 mg | 280 mg | 1.6 mg | 2.2 mg | 0.15 mg | 1.37 mg |
はとむぎ | 1 mg | 85 mg | 6 mg | 12 mg | 20 mg | 0.4 mg | 0.4 mg | 0.11 mg | 0.81 mg |
米 | 1 mg | 89 mg | 5 mg | 23 mg | 95 mg | 0.8 mg | 1.4 mg | 0.22 mg | 0.81 mg |
全体的にみて言えることは、お米と比べるとミネラル類はどれも多く含まれていることです。ただし、はと麦に関してはお米とそれほど変わらなかったり、お米よりも数値が下回ってる項目がありますね。
一概に数値が高ければ栄養価が高いとは言えない(一番大事なのは適量摂取)ので、誰しもにおすすめとは言えないものの、ミネラル類に関してはあわ・もろこしの2種類がより多くの栄養を含んでいると言えます。
鉄分に関しては、あわが4.8mgと他の穀類の数倍を誇っています。年齢によって異なるものの、1日に必要な鉄分量(推定平均必要量)はおおよそ成人男性(18〜49歳)で6〜6.4mg、成人女性(18〜49歳)で5mg(3)なのであわを100g分何かしらの形で調理して食べれば1日に必要とされる鉄分量はクリアできる形になります。
*詳しくは厚労省が公表している( 2 )微量ミネラル – 2.欠乏の回避 – ①鉄(Fe)2─1─2.成人(推定平均必要量、推奨量)を確認してください。他のミネラルについても摂取量がまとまっているので便利です。
ビタミン類は粟・きびの数値が高い
食品名 | ビタミンB1 | ビタミンB2 | ナイアシン | ビタミンB6 | 葉酸 | ビオチン |
粟 | 0.56 mg | 0.07 mg | 2.9 mg | 0.18 mg | 29 μg | 14.4 μg |
きび | 0.34 mg | 0.09 mg | 3.7 mg | 0.2 mg | 13 μg | 7.9 μg |
はとむぎ | 0.02 mg | 0.05 mg | 0.5 mg | 0.07 mg | 16 μg | – |
ひえ | 0.25 mg | 0.02 mg | 0.4 mg | 0.17 mg | 14 μg | 3.6 μg |
もろこし | 0.1 mg | 0.03 mg | 3 mg | 0.24 mg | 29 μg | – |
米 | 0.08 mg | 0.02 mg | 1.2 mg | 0.12 mg | 12 μg | 1.4 μg |
続いてはビタミン類について。ここではビタミン類の中からいくつかのものを抜き出して表示しています。含まれているすべてのビタミンを確認したい方はそれぞれ個別ページへリンクしているのでそちらからご確認ください。
全体を比較すると、ミネラル類の表をみた時と同じようにビタミンB1、ナイアシンなどあわ・きびなどの数値が高いことが分かります。
こうして見ると、私たちの常食であるお米は炭水化物含有量については非常に栄養価が高いものの、その他の栄養素量ではかなり数値が低く、他の主菜・副菜と組み合わせる食事法が必須なことが分かりますね。
まとめ
今回は穀類を比較してみました。主食としているお米以外の穀類もそれぞれに特徴を持っていて、うまく使い分ければ食事のバリエーションが増えるだけでなく、栄養摂取もしやすいことがわかったのではないでしょうか。
参考リンク
1. 特産種苗 No.28 - 雑穀類の生産状況 - 1.年産別生産の概要 - 平成29年産 2. 古来からの雑穀、健康志向の高まりで根強い人気 3. ( 2 )微量ミネラル - 2.欠乏の回避 - ①鉄(Fe)2─1─2.成人(推定平均必要量、推奨量)*データの参照元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
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