最近のカロリー制限食ブームで人気が出ているジビエ料理。ジビエとは私たちが普段口にするような牛・豚・鶏とは違って、狩猟された肉類を指す言葉ですが、実際にどんな動物・食材がジビエ肉に該当するのでしょうか。
また、ジビエ肉とされる鹿肉やウサギ肉は一般に牛や豚に勝るほどの低カロリー・高タンパクのスーパーフードと紹介されることがありますが、実際にどれぐらい栄養価がちがうのでしょうか。また低カロリーな理由はどこにあるのでしょう。
今回はジビエ系の肉類についてこんな疑問を持ったのでジビエ肉の定義・種類やカロリー、栄養価について調べた結果をこちらで紹介します。
目次
ジビエ肉に当てはまる食材は”狩猟されたもの”
ジビエ肉について語るにはどの動物・食材がジビエに該当するのか定義する必要があります。私はフランスに滞在していた経験があるので、ここはジビエという単語の由来になっているフランス語のgibierが何を意味するのか仏語辞書を用いて調べてみます。
Nom collectif des animaux que l’on chasse soit pour les manger, soit pour en limiter les effectifs.
引用:larousse
ここで具体的な食材の名前は挙げられていませんが、「食べる目的か数を減らすために狩猟される動物の総体」との記述があるので、狩猟される動物全般という解釈でよいでしょう。
日本ジビエ振興協会の公式サイトにあたってみると、以下のようにジビエが説明されています。
日本で有名なジビエといえば、捕獲数や被害の多いシカ、イノシシが挙げられますが、実は狩猟の対象となっている野生鳥獣は全てジビエとして定義されます。シカ、イノシシ、野ウサギをはじめ、山鳩、真鴨、小鴨、尾長鴨、カルガモ、キジ、コジュケイ、最近話題のカラス、またフランスでは狩猟禁止で貴重なタシギ等の鳥類や、ヌートリア、ハクビシンといった珍しい動物も含まれます。
引用:日本ジビエ振興協会
要約すると、鹿やイノシシ、野うさぎを含めて狩猟対象となる野生の鳥獣すべてジビエ肉となるそうです。以上の理解のもと、ジビエ肉として今回調査対象とするのは、文部科学省が公開している日本食品標準成分表にリストされている下記の動物とします。
カエル肉、イノシシ肉、ウサギ肉、鹿肉(赤しか)、鹿肉(ニホンジカ)、ヤギ肉、アヒル肉、キジ肉、スズメ肉、ハト肉
ジビエ肉のカロリーは全体的に低め
ジビエ肉のカロリーを多い順に並び替えたものがこちらの表です。
肉の名前 | エネルギー(kcal) |
---|---|
イノシシ肉 | 268 kcal |
鹿肉(ニホンジカ) | 147 kcal |
ウサギ肉 | 146 kcal |
ハト肉 | 141 kcal |
スズメ肉 | 132 kcal |
鹿肉(赤しか) | 110 kcal |
キジ肉 | 108 kcal |
ヤギ肉 | 107 kcal |
アヒル肉 | 106 kcal |
カエル肉 | 99 kcal |
「ジビエ肉」という一つのジャンルだったとしても、鳥類もいれば獣類もいるため、「ジビエ肉=カロリーが低い」や「ジビエ肉=健康的」と一概に言えないのは事実です。
とは言え、イノシシ肉を除いたほとんどの肉類のエネルギーが150kcalを下回っていることを考えると、ジビエ肉には低カロリーの肉が多いとは言えそうです。
中でも鹿肉(赤しか)、キジ肉、ヤギ肉、アヒル肉、カエル肉の5種類は110kcalを下回っておりすべての食材の中でもトップクラスにカロリーが低い部類です。
カロリーと三大栄養素を比較する
カロリーだけではその食材が本当にヘルシーなものかどうかは判別できません。
ここではカロリーの元になっているたんぱく質、脂質、炭水化物といった三大栄養素の含有量を比較していくことで、どのジビエ肉が筋トレ・ダイエット向きなのかを探っていきます。
肉の名前 | エネルギー(kcal) | 水 分 | たんぱく質 | 脂 質 | 炭水化物 |
---|---|---|---|---|---|
イノシシ肉 | 268 kcal | 60.1 % | 18.8 g | 19.8 g | 0.5 g |
鹿肉(ニホンジカ) | 147 kcal | 71.4 % | 22.6 g | 5.2 g | 0.6 g |
ウサギ肉 | 146 kcal | 72.2 % | 20.5 g | 6.3 g | Tr g |
ハト肉 | 141 kcal | 71.5 % | 21.8 g | 5.1 g | 0.3 g |
スズメ肉 | 132 kcal | 72.2 % | 18.1 g | 5.9 g | 0.1 g |
鹿肉(赤しか) | 110 kcal | 74.6 % | 22.3 g | 1.5 g | 0.5 g |
キジ肉 | 108 kcal | 75 % | 23 g | 1.1 g | 0.1 g |
ヤギ肉 | 107 kcal | 75.4 % | 21.9 g | 1.5 g | 0.2 g |
アヒル肉 | 106 kcal | 77.2 % | 20.1 g | 2.2 g | 0.2 g |
カエル肉 | 99 kcal | 76.3 % | 22.3 g | 0.4 g | 0.3 g |
この表を見ると、ジビエ肉の中にはたんぱく質が20グラム以上と豊富なものも、脂質が2グラム以下と低脂質な食材も多く伺えます。
とりわけ、鹿肉(赤しか)やキジ肉、ヤギ肉、カエル肉は高タンパク・低脂質で理想的な食材です。なかなか食べる機会は多くないとは思いますが、筋トレやダイエットをしているならこういった栄養価の食材を中心にしたいですね。
ところで、ジビエ肉は普通の牛肉・豚肉・鶏肉に比べて低カロリーで栄養豊富とジビエ肉を称賛する声をよく聞きますが、実際はどうなのでしょうか。
牛豚鶏肉と比べたジビエ肉の栄養価
先ほどジビエ肉の定義を解説するときに引用した日本ジビエ振興協会さんのホームページを確認すると、ジビエ肉として代表的な鹿・イノシシを、牛肉・豚肉と比較している表があります。
表を見る限り、一見するとジビエ肉の方がたんぱく質豊富で普通の牛・豚よりも栄養豊富に見えるのですが、個人的な意見を言わせてもらうと、必ずしも、ジビエ肉>家畜の等式は成り立たないと思っています。
というのも、このサイトの表で牛肉と豚肉のデータ元となっているのは牛肉は和牛のサーロイン、豚肉は肩ロース(脂身つき)。出典元は文部科学省の日本食品標準成分表なので、おそらく、
- <畜肉類>うし [和牛肉] サーロイン 赤肉 生
- <畜肉類>ぶた [大型種肉] かたロース 脂身つき 生
この2種類のデータを利用しているものと思われます。
ここで疑問に思う点は、なぜ牛肉と豚肉の中でもあえて脂質とカロリーの高い部位(和牛のサーロインと肩ロース脂身つき)を選択しているかです。
事実として、牛肉や豚肉でもヒレ肉やもも肉のように脂身が少なく高タンパクな部位もあります。
私にはジビエ肉を優位に見せるために恣意的に牛肉・豚肉の中でも脂質の多い高カロリーな部位を見せているように思えてしまうので、こちらのサイトのデータではなく、日本食品標準成分表に掲載されているいくつかの牛肉・豚肉・鶏肉の部位と照らし合わせながら、ジビエ肉と一般的なお肉との栄養比較をしていこうと思います。
一部のジビエ肉は牛豚鶏よりも低カロリー
今回牛豚鶏肉からそれぞれ選択した部位は下記の通りです。
牛肉サーロイン(脂身つき)、牛肉ヒレ肉、豚肉肩ロース(脂身つき)、豚肉ヒレ肉、鶏ささみ肉、鶏むね肉(皮つき)、鶏もも肉(皮なし)
それぞれ脂身の多い部位と少ない部位を選びました。これら7種類の食材を含んだ栄養比較表がこちら。分かりやすいように牛豚鶏肉の前にはそれぞれの絵文字をつけています。
肉の名前 | エネルギー(kcal) | 水 分 | たんぱく質 | 脂 質 | 炭水化物 |
---|---|---|---|---|---|
🐮牛肉サーロイン(脂身つき) | 298 kcal | 57.7 % | 17.4 g | 23.7 g | 0.4 g |
イノシシ肉 | 268 kcal | 60.1 % | 18.8 g | 19.8 g | 0.5 g |
🐷豚肉肩ロース(脂身つき) | 253 kcal | 62.6 % | 17.1 g | 19.2 g | 0.1 g |
🐔鶏むね肉(皮つき) | 244 kcal | 62.6 % | 19.5 g | 17.2 g | 0 g |
鹿肉(ニホンジカ) | 147 kcal | 71.4 % | 22.6 g | 5.2 g | 0.6 g |
ウサギ肉 | 146 kcal | 72.2 % | 20.5 g | 6.3 g | Tr g |
ハト肉 | 141 kcal | 71.5 % | 21.8 g | 5.1 g | 0.3 g |
🐔鶏もも肉(皮なし) | 138 kcal | 72.3 % | 22 g | 4.8 g | 0 g |
🐮牛肉ヒレ肉 | 133 kcal | 73.3 % | 20.5 g | 4.8 g | 0.3 g |
スズメ肉 | 132 kcal | 72.2 % | 18.1 g | 5.9 g | 0.1 g |
🐷豚肉ヒレ肉 | 130 kcal | 73.4 % | 22.2 g | 3.7 g | 0.3 g |
🐔ささみ肉 | 114 kcal | 73.2 % | 24.6 g | 1.1 g | 0 g |
鹿肉(赤しか) | 110 kcal | 74.6 % | 22.3 g | 1.5 g | 0.5 g |
キジ肉 | 108 kcal | 75 % | 23 g | 1.1 g | 0.1 g |
ヤギ肉 | 107 kcal | 75.4 % | 21.9 g | 1.5 g | 0.2 g |
アヒル肉 | 106 kcal | 77.2 % | 20.1 g | 2.2 g | 0.2 g |
カエル肉 | 99 kcal | 76.3 % | 22.3 g | 0.4 g | 0.3 g |
表をざっと見ても分かることは、ジビエ肉=普通の肉よりも優秀とは一概には言えないということです。
もちろんジビエ肉の中でもキジ肉、ヤギ肉、アヒル肉、カエル肉のように鶏肉や牛肉よりも低カロリーな食材はあるものの、全体を見ると、ジビエが優秀なわけではなく、ジビエに含まれる鳥獣に優秀な動物が多いと言った方が正確でしょう。
事実として、カエル肉、キジ肉の高タンパク・低脂質具合は素晴らしいです。たんぱく質量こそ鶏ささみ肉には劣るものの、それと近い数字を出しています。
まとめ:ジビエ肉で筋トレ向きな食材は鹿、キジ、カエルなど
今回見てきたことをまとめると次の3点のようになります。
- ジビエ肉には低カロリーなものが多い
- 牛豚鶏肉との単純な比較は難しい
- ジビエ肉全体が優秀なわけではない
単純に筋トレ向き食材をたくさん食べたいなら鶏のささみ肉が一番ですが、個人的には今回の調査を通してキジ肉や鹿肉が気になったので、ジビエ料理が食べられるお店を探して行ってこようと思います。
*データの参照元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
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